MAKER’S ESSAY

つくり手さんのあれこれ

つくり手さんのあれこれ

「作り手」として感じたり、発見したり、気づくこと。
その景色からみえるものに、あなたの暮らしを豊かにするヒントがあるかもしれません。ここでは、様々なつくり手さんのあれこれをご紹介しています。

元来お茶は“嗜好品”だった。現在では、多種多様なお茶を、自動販売機やスーパーなどでいつでも手軽に手に入れることができる。誰もがお茶を生活の一部として消費できるようになった反面、“良いお茶”と接する機会が減っているようにも感じる。最近は、急須で淹れてお茶の時間を楽しんだり、お客様をもてなしたりすることも減ってきた。そんな状況の中「抹茶」を点てて飲む人は、一体どのくらいいるだろうか。

私は、小さな頃から家でお抹茶を自分で点てて飲むのが“当たり前”だった。そしてその抹茶が美味しいのも“当たり前”だった。
歳を重ねるにつれ思い知らされる世間とのギャップ。
自分にとっての“当たり前”が、世間では“当たり前”でないという事実に、哀しい気持ちや戸惑いがないといえば嘘になる。

今は茶農家としてこの状況を少しでも良くしたいと考えている。では、抹茶を点てることに、どんな価値があるというのか。
私が考える一番のメリットは健康的というのは言うまでもなく、意図的に“時間を作れる“ことだと思っている。

1日24時間という時間は、生き物全てに平等に与えられたルールであり、その中でどう時間を使うのか私達は考えなくてはいけない。朝起きてから夜寝るまで仕事のことを考えっぱなし、追われっぱなしという忙しない日々を当然のように繰り返しいる人たちも沢山いるのではないだろうか。そういった「どうしても自分のために時間が作れない」人たちにこそ抹茶を点ててほしい。お茶を点てることは面倒くさいと思うかもしれないが、それは誤解だ。茶碗と茶筅(ちゃせん)さえあれば簡単に点てられる。茶殻が出ないからゴミを捨てる必要もない。実は「インスタントティー」なのだ。

お茶の時間には、“無”や“余白”がデザインされている。抹茶を点ててから飲み終わるまでの“時間”は何も考えなくても良い。つまり、全てのことを忘れホッと一息つく時間を半ば強制的に作り出すことができるのだ。わずかであっても、それは1日のうちの大事な自分の時間になるだろう。そして、せっかく抹茶を飲むのであれば自分の気に入った“良いお茶”を飲んでもらいたいと私はと思っている。

京都府生まれ。代々受け継いできた伝統農法で真摯に、丁寧に最高品質の抹茶を作る京都 宇治市内の碾茶農家、茶園清水屋10代目。茶農家の日常をPOPにお届けする宇治碾茶BrothersとしてYoutubeやInstagramでも発信中。

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